サウナは人と人を繋げてくれる最高のツール 森實敏彦 × ととのえ親方


森實敏彦 × ととのえ親方

サウナには、単なるリラクゼーションの手段に留まらない、人と人とを繋げる力があります。
その効果にいち早く目を向け、ビジネスの現場にも取り入れた、森實敏彦さん。今回のととのえ親方との対談では、森實さんが自らのオフィスにサウナを作ったことで感じた驚きの変化や、社内のコミュニケーションの進化の秘密に迫ります。
また、森實さんの自宅サウナプロジェクトに籠められた、「心も体も美しくととのうサウナ」へのこだわりの数々も必読!
日々の生活にサウナを取り入れることがどれほど革命をもたらすのか、お二人の対話を通じて探っていきましょう。


 

森實敏彦(もりざね としひこ)
実業家であり、サウナ愛好者としても知られる。愛知県出身、慶應義塾大学卒業後、外資系IT企業を経て、株式会社タマディックの代表取締役社長に就任。サウナ愛好家としては、フィンランド大使館公認のサウナアンバサダーとしても活動。自宅やオフィスにサウナを導入し、社員の健康向上やリラクゼーション促進に取り組んでいる。


ととのえ親方(松尾大)
複数の会社を経営する傍ら、日本全国のサウナ施設のプロデュースを手掛ける実業家にしてプロサウナー。多くの人を“ととのう”状態に導いてきたことから“ととのえ親方”と呼ばれるように。秋山大輔(サウナ師匠)と共にプロサウナーの専門ブランド[TTNE]を立ち上げ、サウナ界における様々なジャンルで活動を展開している。


ーーオフィスにサウナを設けて変わったこととは?

親方:まず、森實さんといえばオフィスサウナ「Luova Sauna(ルオヴァ サウナ)※」ですよね。サウナを会社に作ったことで、どんな変化がありました?

(※「Luova Sauna」:森實さんの会社「タマディック」の新社屋の最上階にあるサウナ。世界的な建築家の坂茂さんによる設計)

森實:いや、最初は「社長、サウナ作っちゃったの?」って、周りから結構言われたよ(笑)。新しいもの好きな社員はすぐに使い始めたけど、そうじゃない人たちはちょっと距離を置いてた感じかな。でも、3年経った今では、サウナが会社の中心的な存在になったんだよね。

親方:へぇー、すごい! 社員のみなさんも、最初は抵抗があるメンバーもいたんですね。でも、3年も経つとだいぶ変わるんだ。
みなさん、どんな使い方をしてるんですか?

森實:例えば、歓迎会とか忘年会の後にみんなでサウナ行ったり、研修や発表会の後にも使ってるよ。
最近は社員が「今度の土曜日、俺の会社来ない?」って言って、友達を連れてくるようになって。これって、普通の会社じゃなかなかないよね(笑)。


親方:友達を会社に呼んじゃうなんて、面白いですね。それで、どんな変化が生まれました?

森實:予約がすごく埋まるようになったよ。10月から12月までの予約はいっぱいで、空いてる日がない(笑)。
それに、社員たちがサウナにすごくポジティブになって。特に女性社員が前よりサウナを使うようになったかな。最近でいうと、気づいたら女子社員だけで忘年会を開いていて、60人以上集まったりして。俺が、シャンパン8本開けさせられたりして(笑)。

親方:女子社員だけでそんなに集まったんですか!? すごいな。
でも、最初はサウナに入りづらかった人もいたんじゃないですか?

森實:最初はね。やっぱり女性社員の中には「他の人に身体を見せたくない」っていうメンバーもいて。でも、3年経ったら、「楽しいからもういいか!」って、自然に楽しんでくれるようになったんだよね。サウナって、本当に人と人を近づける力があるんだなって実感してるよ。

親方:確かに、サウナってリラックスできるから、会話もしやすくなりますもんね。

森實:これまでは、会社の付き合いはあっても、そういう雰囲気の集まりはなかった。サウナがあることによって、会社全体の空気感もほぐれているのを感じるよね。

サウナに入ってしまえば、みんなスーツも肩書も脱いで、部署も立場も役職も関係ないから。「平等」をルールにして、大切にしてるよ。サウナに入ったら、みんな平等。



あと、もう一つ面白いのは、会社のメンバーがみんなすごく健康になった。

親方:おぉ! どう影響したんですか?

森實:みんな健康診断の結果が良くなって、会社全体の肥満率が35%から29%に下がったんだよ。
あと、うちの会社は「健康チャレンジ」ってのもやってて、脂肪100gを100円で買い取ったり、ウエスト1cm減ったら1000円で買い取るみたいなこともしてて(笑)。それがサウナを使う理由の一つになってるんだよね。

親方:健康チャレンジ、面白い! みんなにとって嬉しいことですね。

森實:うん、みんな健康的に、楽しくやってる感じだよ。みんなが食べているものも、全体的に茶色系の食材が減って、野菜とか摂るようになったりしてね。

うちの会社内では、サウナがその象徴になってるんだよね。健康の、やわらかい象徴。
本当は「健康」っていうテーマって、みんなが考えているほど大変だったり無理にやるものじゃなくて、本来は優しく取り組めるものだと思う。

親方:なるほど。サウナが、ただの設備じゃなくて、健康やコミュニケーションを促進する場所になっているってことですよね。


 

ーー自宅サウナプロジェクトが始まった経緯とは?

親方:今回、自宅マンションに作ったサウナは、建築家の谷尻誠さんが設計したんですよね。
どういう経緯で谷尻さんにお願いすることになったんですか?

森實:最初、一般的な設計案をいくつか見たんだけど、あまりピンと来るものがなくて。そんな中で、YO-KINGさんと食事してるときに、谷尻さんの話が出てきて、「谷尻さんにお願いしてみたら?」って提案されて。うちの奥さんも、「もしよろしければ、ぜひ!」ってなって。それで、谷尻さんがOKしてくれた。
せっかくサウナを作るなら、誰が見ても、「ここ、入ってみたい」と思うものでないと、意味がないと思ってて。そういう設計ができる人で、サウナのこともわかっている人がいい。それで、谷尻さんにお願いすることにしたんだよ。

親方:どんなコンセプトで作ったんですか?

森實:東京に別宅を持とうと思ったのが始まり。最初は、そこにサウナを作るかどうかも迷ってたんだ。けど、俺も奥さんもサウナ大好きだし。

それに、会社にサウナを作ったことで、すごく交流が広がったからさ。フィンランドの人とかスポーツ選手、芸能人とかも遊びに来るようになった。で、その良さを家でも再現したくて。

家でもサウナ作れば、良い人たちが集まるし、人との縁が増えて深まれば、人生的にやれることも増えるし、人生がより楽しくなるんじゃないかなって思ってさ。

親方:いいですね、それ! 友達がどんどん増えて、いろんな経験ができる感じですよね。
森實:たとえば、友達にお寿司握ってもらったり、お酒に詳しい友人が来てくれたり、ちょっとしたパーティーみたいな集まりもしやすくなってるよ。


親方:今回の自宅サウナには、「KAUNIS OLO(カオニス オーロ)」って名前もついてますよね。なんだか素敵な響きだけど、どういう意味があるんですか?

森實:家サウナの「KAUNIS OLO」は、うちの奥さんの意見をかなり取り入れてるんだよね。うちの奥さん、お茶の先生でありながら、アカデミー・デュヴァンでワインの先生もやってるんだよ。要するに、師匠(笑)。

親方:師匠(笑)!

森實:奥さんは、うちの名古屋のオフィスのLuova Saunaでも、ハーブティーを用意して、健康的なサウナ体験を参加者のみなさまに提供する、みたいな取り組みを何度かやってる。その奥さんの視点からも提案できる、女性にも喜ばれるサウナを、今回は作りたかったんだよね。

それを言葉にしたのが、「KAUNIS OLO」。フィンランド語で、「心も体も美しい」という意味。「文化的かつ健康的かつ、美容にも心にもいいサウナにしたい!」と思って名付けたんだ。
ここに集まる人たちと一緒に、いいお茶を飲みながら、心地よい時間を過ごせる、そんなサウナにしたいって思って。

親方:なるほど、家族や友達と集まるのにもピッタリな感じがしますね。



ーー自宅サウナに籠められたこだわりとは?

親方:今回のサウナには、具体的には、どんなこだわりを詰め込んだんですか?

森實:まず、全体の美しさを最優先にしてる。見た瞬間に「ここに入りたい!」って思うようなデザインを目指したかな。無駄な要素をそぎ落として、シンプルだけど整った美しさを追求して。




あと、4〜5人で一緒にサウナに入れることも大事だった。一緒に過ごせる人数がこれくらいないと、深いコミュニケーションって生まれにくいじゃない? だから、4~5人が一緒に使える広さで、全部気持ちよく回れるように工夫しようと思って。
サウナ室、水風呂、休憩の動線をしっかり設計して、デザイン的にも美しく仕上げて。

親方:自宅サウナなのに、そんなに本格的にするなんてすごいな。

森實:いや、でも実は制約も多かったんだよ。マンションだから電源容量が限られてて、予定してたCilindro 10のストーブが置けなくて、Cilindro 6に落としたんだ。それで小さいストーブでも効率的に温まれるように工夫した。例えば、床を上げてサウナ室の容積を減らしたり、ガラスを使って見た目も美しく仕上げたりね。

親方:そのガラスって、普通のガラスとは違うんですか?

森實:全然違うよ。ストーブの一番近く以外は、普通の網入りガラスじゃなくて、スーパースペーシアっていう真空ガラスを採用したんだ。
これは、熱にも通常のガラスより強いし、これがあると、何より外からの景色が綺麗に見えて、部屋全体が明るく感じる。ストーブの近くには、超耐熱ガラスを設置することで、ガラスの割れ対策もしてる。

親方:なるほど。ガラス張りにすることによる効果っていうのは、どういったことがありました?

森實:ガラス張りにして一番いいと思ったことは、サウナの中の人と外の人の会話が途切れないことかな。サウナ内の一部と休憩スペースのベンチを横に繋げるような設計にして、目線の高さも一緒にしてるから、横に座りながらお喋りができるイメージ。
サウナ内のどこに座っている人とも、視線を合わせることができるしね。

 

親方:普通は、サウナ室出たら会話が途切れちゃいますもんね。

森實:そうそう。けど、ガラスの効果もあって空間自体が繋がってるような、一体感のある設計にしてるから、みんなでずっと一緒に、仲良くサウナを楽しめるような作りになってるんだよね。

親方:他には、空気の流れにもこだわってるんですよね?

森實:そう! フィンランド式サウナでも息苦しいのが嫌いだから、給気にはかなりこだわってる。Luova Saunaもだけど、今回もサウナ室の下部に隙間を作って、そこが給気口になるようにしてるの。サウナ室の下に、間接照明みたいに見えてるところがあるでしょ? あそこが実は、全部給気口。

親方:へぇ、お洒落な給気口だな!

森實:サウナの下10cmくらいは空いてて、座面を上に設定してるんだよね。
あと、天井もカーブの設計にしてるから、ロウリュをすると、空気が天井のカーブを通って部屋全体に循環するように設計してある。
だから、空気のまろやかな流れが生まれて、ずっと心地よく、ゆっくりお喋りしながら入っていられるんだ。そういうサウナが好きだからね。


親方:座面の設計にもこだわりがあるんですよね?

森實:ベンチの一部はさっき言った通り、休憩スペースと繋がるような作りになってるし、下段の座面については、特に広く設計してある。ストレッチしてもヨガやっても、YouTube見てもネットフリックスみてもいい。プライベートにすごせるような、そんなサウナを目指して作ったよ。
奥のベンチの下まで、下段の座面と同じ板を敷いてあるから、下段の人はそっちに足を伸ばして、ヨガのポーズを取ることもできる。とにかく、広くのびやかに使えるんだ。

親方:休憩スペースの方のこだわりはなんですか?

森實:サウナの中とベンチの高さを繋げて、中にいる人と視線が合いやすい高さにしてるだけじゃなくて、角度とか色味とかもこだわったね。角度は、もたれかかったときに心地よい角度を追求したくて、作り直したりしたよ。

あとは、休憩用のベンチは4人用の席が繋がってる作りにしてるんだけど、真ん中2席については、オットマンが引き出しのように引き出せるようになってる。普段はしまっておけるから、見た目的にも洗練されて見えるんだよね。


一番サウナ側のベンチの下には、水洗い掃除のときに使える水栓を仕込んでるけど、そこに目隠し効果を持たせることもできてて、一石二鳥だよ。

親方:休憩用ベンチの上のブラインドも、お洒落ですね。

森實:木の温もり感がいい感じでしょ? 手動で角度を変えられるようにしてるんだ。外の窓を開けて、ブラインドの角度を調整して、ほどよい外気と日光の入り方を調整できるよ。

親方:なるほど、なるほど。こだわり満載だな。
水風呂も自慢なんですよね?

森實:うん、屋外に設置したチラーで、15℃くらいに冷やした水風呂を循環させてる。
しかも、奥側を深くして、深く入りたい時と半身浴で使いたい時の両方に対応できるように作ったんだよ。水風呂で深く潜りたい時はそういう風にも使えるし、温かいお湯を入れれば、普通のお風呂としてゆっくり半身浴も楽しめる。自宅ならではの贅沢だよね。

親方:しかも、水風呂に関しては、外からも操作できるとか…?

森實:そう。今回特別にリモートスイッチを作ってる(笑)。たとえば外にいて「帰ったらサウナ入りたいな」と思った時、できるだけすぐに入りたいじゃない? だから、水風呂をせめて先に溜めておけるようにしようと思って。

親方:そんな凝ったサウナ、マンションのどこに作ったんですか?

森實:もともと、一番北側にあった6畳間だよ。光も入りづらいし風通しもあまり良くはない、いわば、一般的には一番使いづらいとされるスペース。前の住人の方は、物置にしていたような場所。でも、そこにお風呂場を移動させてきて、脱衣所と浴室をセットにした。サウナ兼、浴室兼、脱衣所として、リフォームしたんだ。
普通は使わない部屋をサウナに変えると、生活の質がすごく向上するんだよ! 実は、いろんな家で再現性があると思うんだよね。

親方:子どもが巣立ったりして、使わない部屋ができたら、サウナにしちゃう作戦、アリですね(笑)!

森實:サウナを作ると、家族の会話も増えるしね! サウナって不思議で、たとえ家族であっても、お風呂だとみんな一緒に入らないじゃない? けど、サウナだとみんな一緒に入れるし、自然と人が集まるんだよね。

会社でも、サウナを作ったことで社員同士が出会いやすくなって。一度でもサウナで会ったことがあると、その後も話しやすくなったりとか。
家だって、お風呂のためにわざわざ友達呼んだりはしないけど、サウナだったら、友達も「入りたい!」って感じで来てくれるし。

みんな一緒に入れるから、家族や友達、いろいろな人との会話の量も増えるし、いろんなジャンルの話をする。そういう会話が増えるのって、いいよね。なんか、良い関係が築ける感じがするよ。



ーーオフィスサウナとは違う、自宅サウナの役割と効果とは?

親方:自宅サウナって、 きっとオフィスのサウナとは、また役割が違いますよね?
自宅にサウナがあることで、何が変わりました?

森實:何より一番は、友達に会いやすくなったところかな!

普通、友達と会うって、みんなでどこかで食事するとか。もっと公的な場で会う感じになるけど、サウナで会うのは、もう少しプライベート寄りっていうか。サッパリして、ゆっくり喋るみたいな感じになるんだよね。

親方:ほうほう。よりくつろいで、心地よく自分をさらけだせるイメージですかね。

森實:そうだね。あとは、うちは、サウナありきで1から作ってるから、サウナとリビングそれぞれで時間を過ごすことが、繋がった感覚になるように、実は設計してるんだよね。

サウナスペース内でも、ベンチを繋げてあるから、人と人とがすごく話しやすい。そして、サウナスペースとリビングが繋がるような設計をしてるから、家族や訪れた人が、両方で繋がった時間を過ごせる。
サウナをおくだけじゃない、トータル設計。全部が繋がってるんだよね。

親方:全部が繋がってる! 空間そのものが、心地いい感じがしますね。いいコンセプトですね。

森實:会社のサウナも、ホールと繋がってるんだ。だから、サウナから出た後、みんなでテラスでビール飲んだり、ホールでケータリング頼んだり、っていう時間を、繋げて過ごすことができる。
うちは、それの家版、っていう感じかな。けど家だし、プライベート空間だから、みんなものすごくくつろいで、いい顔して過ごしてくれるんだよね。



ーー読者サウナーへのメッセージ

親方:じゃあ最後に、この記事を読んでるサウナ好きに一言ください!

森實:自宅にサウナがある生活、最高ですよ! オススメなので、みなさんもぜひ。
本当に、いいサウナがあると生活が変わるんだよ。

サウナはただの設備じゃなくて、人と人をつなげる場。会社でも家庭でも、サウナがあることで自然に会話が生まれて、コミュニケーションも活発になるし、生活の質もものすごく上がる! 
縁が広がるし、友達との時間も深まる。自分と周りの友達との、規模力が上がるんだよね。

たとえ、便利な場所から一駅二駅遠くに離れても、一部屋部屋数の多い中古の物件を買って、サウナ付きの家にリフォームするのもアリじゃないかな?

毎日幸せだよ。いいサウナがあると、家帰るの、楽しみになるから。いいサウナを作ることを諦めないで欲しい! それが日々の幸せに繋がるから。

親方:確かに、自宅サウナには夢と幸せが詰まってますね。
いろいろと参考になる、楽しいお話しをありがとうございました!

森實:こちらこそ、ありがとう! 自宅サウナ、ぜひみなさんにも導入してみて欲しいです!


 


森實敏彦 × ととのえ親方

サウナには、単なるリラクゼーションの手段に留まらない、人と人とを繋げる力があります。
その効果にいち早く目を向け、ビジネスの現場にも取り入れた、森實敏彦さん。今回のととのえ親方との対談では、森實さんが自らのオフィスにサウナを作ったことで感じた驚きの変化や、社内のコミュニケーションの進化の秘密に迫ります。
また、森實さんの自宅サウナプロジェクトに籠められた、「心も体も美しくととのうサウナ」へのこだわりの数々も必読!
日々の生活にサウナを取り入れることがどれほど革命をもたらすのか、お二人の対話を通じて探っていきましょう。


 

森實敏彦(もりざね としひこ)
実業家であり、サウナ愛好者としても知られる。愛知県出身、慶應義塾大学卒業後、外資系IT企業を経て、株式会社タマディックの代表取締役社長に就任。サウナ愛好家としては、フィンランド大使館公認のサウナアンバサダーとしても活動。自宅やオフィスにサウナを導入し、社員の健康向上やリラクゼーション促進に取り組んでいる。


ととのえ親方(松尾大)
複数の会社を経営する傍ら、日本全国のサウナ施設のプロデュースを手掛ける実業家にしてプロサウナー。多くの人を“ととのう”状態に導いてきたことから“ととのえ親方”と呼ばれるように。秋山大輔(サウナ師匠)と共にプロサウナーの専門ブランド[TTNE]を立ち上げ、サウナ界における様々なジャンルで活動を展開している。


ーーオフィスにサウナを設けて変わったこととは?

親方:まず、森實さんといえばオフィスサウナ「Luova Sauna(ルオヴァ サウナ)※」ですよね。サウナを会社に作ったことで、どんな変化がありました?

(※「Luova Sauna」:森實さんの会社「タマディック」の新社屋の最上階にあるサウナ。世界的な建築家の坂茂さんによる設計)

森實:いや、最初は「社長、サウナ作っちゃったの?」って、周りから結構言われたよ(笑)。新しいもの好きな社員はすぐに使い始めたけど、そうじゃない人たちはちょっと距離を置いてた感じかな。でも、3年経った今では、サウナが会社の中心的な存在になったんだよね。

親方:へぇー、すごい! 社員のみなさんも、最初は抵抗があるメンバーもいたんですね。でも、3年も経つとだいぶ変わるんだ。
みなさん、どんな使い方をしてるんですか?

森實:例えば、歓迎会とか忘年会の後にみんなでサウナ行ったり、研修や発表会の後にも使ってるよ。
最近は社員が「今度の土曜日、俺の会社来ない?」って言って、友達を連れてくるようになって。これって、普通の会社じゃなかなかないよね(笑)。


親方:友達を会社に呼んじゃうなんて、面白いですね。それで、どんな変化が生まれました?

森實:予約がすごく埋まるようになったよ。10月から12月までの予約はいっぱいで、空いてる日がない(笑)。
それに、社員たちがサウナにすごくポジティブになって。特に女性社員が前よりサウナを使うようになったかな。最近でいうと、気づいたら女子社員だけで忘年会を開いていて、60人以上集まったりして。俺が、シャンパン8本開けさせられたりして(笑)。

親方:女子社員だけでそんなに集まったんですか!? すごいな。
でも、最初はサウナに入りづらかった人もいたんじゃないですか?

森實:最初はね。やっぱり女性社員の中には「他の人に身体を見せたくない」っていうメンバーもいて。でも、3年経ったら、「楽しいからもういいか!」って、自然に楽しんでくれるようになったんだよね。サウナって、本当に人と人を近づける力があるんだなって実感してるよ。

親方:確かに、サウナってリラックスできるから、会話もしやすくなりますもんね。

森實:これまでは、会社の付き合いはあっても、そういう雰囲気の集まりはなかった。サウナがあることによって、会社全体の空気感もほぐれているのを感じるよね。

サウナに入ってしまえば、みんなスーツも肩書も脱いで、部署も立場も役職も関係ないから。「平等」をルールにして、大切にしてるよ。サウナに入ったら、みんな平等。



あと、もう一つ面白いのは、会社のメンバーがみんなすごく健康になった。

親方:おぉ! どう影響したんですか?

森實:みんな健康診断の結果が良くなって、会社全体の肥満率が35%から29%に下がったんだよ。
あと、うちの会社は「健康チャレンジ」ってのもやってて、脂肪100gを100円で買い取ったり、ウエスト1cm減ったら1000円で買い取るみたいなこともしてて(笑)。それがサウナを使う理由の一つになってるんだよね。

親方:健康チャレンジ、面白い! みんなにとって嬉しいことですね。

森實:うん、みんな健康的に、楽しくやってる感じだよ。みんなが食べているものも、全体的に茶色系の食材が減って、野菜とか摂るようになったりしてね。

うちの会社内では、サウナがその象徴になってるんだよね。健康の、やわらかい象徴。
本当は「健康」っていうテーマって、みんなが考えているほど大変だったり無理にやるものじゃなくて、本来は優しく取り組めるものだと思う。

親方:なるほど。サウナが、ただの設備じゃなくて、健康やコミュニケーションを促進する場所になっているってことですよね。


 

ーー自宅サウナプロジェクトが始まった経緯とは?

親方:今回、自宅マンションに作ったサウナは、建築家の谷尻誠さんが設計したんですよね。
どういう経緯で谷尻さんにお願いすることになったんですか?

森實:最初、一般的な設計案をいくつか見たんだけど、あまりピンと来るものがなくて。そんな中で、YO-KINGさんと食事してるときに、谷尻さんの話が出てきて、「谷尻さんにお願いしてみたら?」って提案されて。うちの奥さんも、「もしよろしければ、ぜひ!」ってなって。それで、谷尻さんがOKしてくれた。
せっかくサウナを作るなら、誰が見ても、「ここ、入ってみたい」と思うものでないと、意味がないと思ってて。そういう設計ができる人で、サウナのこともわかっている人がいい。それで、谷尻さんにお願いすることにしたんだよ。

親方:どんなコンセプトで作ったんですか?

森實:東京に別宅を持とうと思ったのが始まり。最初は、そこにサウナを作るかどうかも迷ってたんだ。けど、俺も奥さんもサウナ大好きだし。

それに、会社にサウナを作ったことで、すごく交流が広がったからさ。フィンランドの人とかスポーツ選手、芸能人とかも遊びに来るようになった。で、その良さを家でも再現したくて。

家でもサウナ作れば、良い人たちが集まるし、人との縁が増えて深まれば、人生的にやれることも増えるし、人生がより楽しくなるんじゃないかなって思ってさ。

親方:いいですね、それ! 友達がどんどん増えて、いろんな経験ができる感じですよね。
森實:たとえば、友達にお寿司握ってもらったり、お酒に詳しい友人が来てくれたり、ちょっとしたパーティーみたいな集まりもしやすくなってるよ。


親方:今回の自宅サウナには、「KAUNIS OLO(カオニス オーロ)」って名前もついてますよね。なんだか素敵な響きだけど、どういう意味があるんですか?

森實:家サウナの「KAUNIS OLO」は、うちの奥さんの意見をかなり取り入れてるんだよね。うちの奥さん、お茶の先生でありながら、アカデミー・デュヴァンでワインの先生もやってるんだよ。要するに、師匠(笑)。

親方:師匠(笑)!

森實:奥さんは、うちの名古屋のオフィスのLuova Saunaでも、ハーブティーを用意して、健康的なサウナ体験を参加者のみなさまに提供する、みたいな取り組みを何度かやってる。その奥さんの視点からも提案できる、女性にも喜ばれるサウナを、今回は作りたかったんだよね。

それを言葉にしたのが、「KAUNIS OLO」。フィンランド語で、「心も体も美しい」という意味。「文化的かつ健康的かつ、美容にも心にもいいサウナにしたい!」と思って名付けたんだ。
ここに集まる人たちと一緒に、いいお茶を飲みながら、心地よい時間を過ごせる、そんなサウナにしたいって思って。

親方:なるほど、家族や友達と集まるのにもピッタリな感じがしますね。



ーー自宅サウナに籠められたこだわりとは?

親方:今回のサウナには、具体的には、どんなこだわりを詰め込んだんですか?

森實:まず、全体の美しさを最優先にしてる。見た瞬間に「ここに入りたい!」って思うようなデザインを目指したかな。無駄な要素をそぎ落として、シンプルだけど整った美しさを追求して。




あと、4〜5人で一緒にサウナに入れることも大事だった。一緒に過ごせる人数がこれくらいないと、深いコミュニケーションって生まれにくいじゃない? だから、4~5人が一緒に使える広さで、全部気持ちよく回れるように工夫しようと思って。
サウナ室、水風呂、休憩の動線をしっかり設計して、デザイン的にも美しく仕上げて。

親方:自宅サウナなのに、そんなに本格的にするなんてすごいな。

森實:いや、でも実は制約も多かったんだよ。マンションだから電源容量が限られてて、予定してたCilindro 10のストーブが置けなくて、Cilindro 6に落としたんだ。それで小さいストーブでも効率的に温まれるように工夫した。例えば、床を上げてサウナ室の容積を減らしたり、ガラスを使って見た目も美しく仕上げたりね。

親方:そのガラスって、普通のガラスとは違うんですか?

森實:全然違うよ。ストーブの一番近く以外は、普通の網入りガラスじゃなくて、スーパースペーシアっていう真空ガラスを採用したんだ。
これは、熱にも通常のガラスより強いし、これがあると、何より外からの景色が綺麗に見えて、部屋全体が明るく感じる。ストーブの近くには、超耐熱ガラスを設置することで、ガラスの割れ対策もしてる。

親方:なるほど。ガラス張りにすることによる効果っていうのは、どういったことがありました?

森實:ガラス張りにして一番いいと思ったことは、サウナの中の人と外の人の会話が途切れないことかな。サウナ内の一部と休憩スペースのベンチを横に繋げるような設計にして、目線の高さも一緒にしてるから、横に座りながらお喋りができるイメージ。
サウナ内のどこに座っている人とも、視線を合わせることができるしね。

 

親方:普通は、サウナ室出たら会話が途切れちゃいますもんね。

森實:そうそう。けど、ガラスの効果もあって空間自体が繋がってるような、一体感のある設計にしてるから、みんなでずっと一緒に、仲良くサウナを楽しめるような作りになってるんだよね。

親方:他には、空気の流れにもこだわってるんですよね?

森實:そう! フィンランド式サウナでも息苦しいのが嫌いだから、給気にはかなりこだわってる。Luova Saunaもだけど、今回もサウナ室の下部に隙間を作って、そこが給気口になるようにしてるの。サウナ室の下に、間接照明みたいに見えてるところがあるでしょ? あそこが実は、全部給気口。

親方:へぇ、お洒落な給気口だな!

森實:サウナの下10cmくらいは空いてて、座面を上に設定してるんだよね。
あと、天井もカーブの設計にしてるから、ロウリュをすると、空気が天井のカーブを通って部屋全体に循環するように設計してある。
だから、空気のまろやかな流れが生まれて、ずっと心地よく、ゆっくりお喋りしながら入っていられるんだ。そういうサウナが好きだからね。


親方:座面の設計にもこだわりがあるんですよね?

森實:ベンチの一部はさっき言った通り、休憩スペースと繋がるような作りになってるし、下段の座面については、特に広く設計してある。ストレッチしてもヨガやっても、YouTube見てもネットフリックスみてもいい。プライベートにすごせるような、そんなサウナを目指して作ったよ。
奥のベンチの下まで、下段の座面と同じ板を敷いてあるから、下段の人はそっちに足を伸ばして、ヨガのポーズを取ることもできる。とにかく、広くのびやかに使えるんだ。

親方:休憩スペースの方のこだわりはなんですか?

森實:サウナの中とベンチの高さを繋げて、中にいる人と視線が合いやすい高さにしてるだけじゃなくて、角度とか色味とかもこだわったね。角度は、もたれかかったときに心地よい角度を追求したくて、作り直したりしたよ。

あとは、休憩用のベンチは4人用の席が繋がってる作りにしてるんだけど、真ん中2席については、オットマンが引き出しのように引き出せるようになってる。普段はしまっておけるから、見た目的にも洗練されて見えるんだよね。


一番サウナ側のベンチの下には、水洗い掃除のときに使える水栓を仕込んでるけど、そこに目隠し効果を持たせることもできてて、一石二鳥だよ。

親方:休憩用ベンチの上のブラインドも、お洒落ですね。

森實:木の温もり感がいい感じでしょ? 手動で角度を変えられるようにしてるんだ。外の窓を開けて、ブラインドの角度を調整して、ほどよい外気と日光の入り方を調整できるよ。

親方:なるほど、なるほど。こだわり満載だな。
水風呂も自慢なんですよね?

森實:うん、屋外に設置したチラーで、15℃くらいに冷やした水風呂を循環させてる。
しかも、奥側を深くして、深く入りたい時と半身浴で使いたい時の両方に対応できるように作ったんだよ。水風呂で深く潜りたい時はそういう風にも使えるし、温かいお湯を入れれば、普通のお風呂としてゆっくり半身浴も楽しめる。自宅ならではの贅沢だよね。

親方:しかも、水風呂に関しては、外からも操作できるとか…?

森實:そう。今回特別にリモートスイッチを作ってる(笑)。たとえば外にいて「帰ったらサウナ入りたいな」と思った時、できるだけすぐに入りたいじゃない? だから、水風呂をせめて先に溜めておけるようにしようと思って。

親方:そんな凝ったサウナ、マンションのどこに作ったんですか?

森實:もともと、一番北側にあった6畳間だよ。光も入りづらいし風通しもあまり良くはない、いわば、一般的には一番使いづらいとされるスペース。前の住人の方は、物置にしていたような場所。でも、そこにお風呂場を移動させてきて、脱衣所と浴室をセットにした。サウナ兼、浴室兼、脱衣所として、リフォームしたんだ。
普通は使わない部屋をサウナに変えると、生活の質がすごく向上するんだよ! 実は、いろんな家で再現性があると思うんだよね。

親方:子どもが巣立ったりして、使わない部屋ができたら、サウナにしちゃう作戦、アリですね(笑)!

森實:サウナを作ると、家族の会話も増えるしね! サウナって不思議で、たとえ家族であっても、お風呂だとみんな一緒に入らないじゃない? けど、サウナだとみんな一緒に入れるし、自然と人が集まるんだよね。

会社でも、サウナを作ったことで社員同士が出会いやすくなって。一度でもサウナで会ったことがあると、その後も話しやすくなったりとか。
家だって、お風呂のためにわざわざ友達呼んだりはしないけど、サウナだったら、友達も「入りたい!」って感じで来てくれるし。

みんな一緒に入れるから、家族や友達、いろいろな人との会話の量も増えるし、いろんなジャンルの話をする。そういう会話が増えるのって、いいよね。なんか、良い関係が築ける感じがするよ。



ーーオフィスサウナとは違う、自宅サウナの役割と効果とは?

親方:自宅サウナって、 きっとオフィスのサウナとは、また役割が違いますよね?
自宅にサウナがあることで、何が変わりました?

森實:何より一番は、友達に会いやすくなったところかな!

普通、友達と会うって、みんなでどこかで食事するとか。もっと公的な場で会う感じになるけど、サウナで会うのは、もう少しプライベート寄りっていうか。サッパリして、ゆっくり喋るみたいな感じになるんだよね。

親方:ほうほう。よりくつろいで、心地よく自分をさらけだせるイメージですかね。

森實:そうだね。あとは、うちは、サウナありきで1から作ってるから、サウナとリビングそれぞれで時間を過ごすことが、繋がった感覚になるように、実は設計してるんだよね。

サウナスペース内でも、ベンチを繋げてあるから、人と人とがすごく話しやすい。そして、サウナスペースとリビングが繋がるような設計をしてるから、家族や訪れた人が、両方で繋がった時間を過ごせる。
サウナをおくだけじゃない、トータル設計。全部が繋がってるんだよね。

親方:全部が繋がってる! 空間そのものが、心地いい感じがしますね。いいコンセプトですね。

森實:会社のサウナも、ホールと繋がってるんだ。だから、サウナから出た後、みんなでテラスでビール飲んだり、ホールでケータリング頼んだり、っていう時間を、繋げて過ごすことができる。
うちは、それの家版、っていう感じかな。けど家だし、プライベート空間だから、みんなものすごくくつろいで、いい顔して過ごしてくれるんだよね。



ーー読者サウナーへのメッセージ

親方:じゃあ最後に、この記事を読んでるサウナ好きに一言ください!

森實:自宅にサウナがある生活、最高ですよ! オススメなので、みなさんもぜひ。
本当に、いいサウナがあると生活が変わるんだよ。

サウナはただの設備じゃなくて、人と人をつなげる場。会社でも家庭でも、サウナがあることで自然に会話が生まれて、コミュニケーションも活発になるし、生活の質もものすごく上がる! 
縁が広がるし、友達との時間も深まる。自分と周りの友達との、規模力が上がるんだよね。

たとえ、便利な場所から一駅二駅遠くに離れても、一部屋部屋数の多い中古の物件を買って、サウナ付きの家にリフォームするのもアリじゃないかな?

毎日幸せだよ。いいサウナがあると、家帰るの、楽しみになるから。いいサウナを作ることを諦めないで欲しい! それが日々の幸せに繋がるから。

親方:確かに、自宅サウナには夢と幸せが詰まってますね。
いろいろと参考になる、楽しいお話しをありがとうございました!

森實:こちらこそ、ありがとう! 自宅サウナ、ぜひみなさんにも導入してみて欲しいです!